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座談会(その4)建築展独特の苦労とは

ブログ座談会「「横浜建築家列伝」をふりかえって」

吉崎:今回の展覧会を作っていく上での苦労した点などを。

青木:建築の展覧会は何度も見てきているので、
 来る人がどういう展覧会に慣れてるかというのは分かってるつもり。
 それは美術館スタイルというか、
 ある建築家の頭の中を図面や当時の模型やスケッチなどを通して、
 作品ができるプロセスを見ていくというスタイル。
 ただうちの館でそれは難しいだろうと。
 完全に建築専門の内容に特化するのは難しいということと、
 展示会場のスペースの問題があるので、
 どこまでオリジナルの建築資料を使いながらできるのかというのが
 一番頭を悩ませたところです。007.gif
 図面は山ほどあるんですよ。
 かといって図面の展示では、僕らは必ず楽しめるんだけれども、
 おそらく大多数の人はそうではない。
 そこをどう見せるか。
 図面ってこうやって見るんですよ、
 というのがあると見やすいだろうという意見もあったんだけど、
 結局言葉で説明するしかない。
 図面の場合は複製のパネルで対応せざるを得ませんでしたけど、
 図面は原寸で見ないと情報が伝わらないというのもあるし。
 アンケートの中でもっとオリジナルの図面をたくさん見たかったという声も。
 そこのところは難しいなとつくづく感じました。
 もう一つは建築だけの話にならないように、
 コーナーのはじめでは時代背景なり当時の都市景観なりという大きなところを示してから、
 個々の建築家なり建築の説明に入っていくという形を心がけたつもりです。
 なかなかその辺は1つ、2つのパネルでは難しかったかな。014.gif

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◆展覧会場の写真

海老名:図面ばかりという内容ではなくて、
 図面以外に写真もあり解説もありという形だったので、
 複合的に楽しめたと思います。
 建築展だから図面が多いかと予想したんですが、
 図面と写真と解説とがうまく調和してると思いました。

鈴木:僕は割と簡潔に簡単にまとめてあるなという感じがしました。
 良くも悪くもね。
 僕の場合はそれがきっかけになって、
 ああ、ちょっと本を読んでみようかな、ということになったし。
 僕はそういう意味では、まあ一般向けの展示になってるんじゃないかなと思いました。

海老名:そうだ、あとキャプションはすごく親切だと思います。
 割と図面って、何とかの図面その1、その2みたいなのって多くないですか。

青木:一部そういうのもあるんですけどね(笑)

海老名:でも屋根がこうでとか、なにか一言あって、その解説が割と親切でいいなと思います。045.gif

神谷:アンケートでは、説明が足りないという声もありますね。

海老名:ああ、そうですか。

鈴木:でも、僕はそれはちょっと違うような気がするけど。

海老名:読むのも疲れますから。

鈴木:うん、疲れる。ぐだぐだ書かれてるほどつらいことはない。

青木:僕はキャプションの大きさを決めて、
 必ずその文字数に収まるように文章を短くしてるんです。
 ただ専門用語が分からないと開館当初から言われてきたから、
 分かりやすい説明をするということは常に意識せざるを得ない。
 しかし、説明をわかりやすくすると文章が長くなってしまって、
 そこのバランスが難しいんです。

座談会(その4)建築展独特の苦労とは_e0164082_11494443.jpg

◆キャプション写真

吉崎:そうですね。

青木:資料を見ずに文字ばかりたどってるような経験を僕も別の展覧会でしているので。
 どうやって資料も見せつつ的確な説明ができるか。これは毎回試行錯誤するしかないのですが。

神谷:アンケートにはキャプションの字が小さい、という声はも相変わらず多いです。

青木:あれより大きくしたら、ちょっとしんどいなあ。

神谷:リピーターの方で良くなってきたねという声もあるんですけれども。
 その辺りの声というのは、もう永遠にというか、新しいお客様が来れば来るほど、
 ご自分の目で見てこうしてあったらいいのに、という意見が出てくるはしょうがないのかな。

青木:ちょっと暗くて見づらいと、やっぱりね。

神谷:照明が暗すぎるという意見もありますし。

青木:今回は必ず資料やパネルの前では暗くて見えないということがないように、
 かつオリジナルのところには光が当たりすぎることがないように調整はしていました。
 ここはご理解をいただくしかないと思っています。キャプションも僕は十分大きいと思う。

神谷:歴史博物館でもそういう声はありました。「小さい」「見えない」。
 ガラス面をのぞいて見たときに反射して文字が見えないとか、
 もうちょっと置く場所を考えたらどうだとか、
 細かい方はたくさんいらっしゃいますので、難しいです。

青木:ガラスケースの中に入れると遠くて見えないから、
 資料はケースの中に入れないでほしいという意見もありましたね。

吉崎:そのあたりは私たちは資料を保存していくとともに、見やすく展示するという、
 いわば二律背反の課題を抱えていて、なかなか解決が難しい問題ですね。

by tohatsu | 2009-11-04 11:52 | その他  

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