フェリス女学生の「ピアノ・レッスン」

昭和戦前期フェリス女学生旧蔵資料紹介、その(3)。

昭和12年にフェリス和英女学校に入学した百合子さん。
彼女が残した在学中の資料のなかには、
授業の課題として提出した作文も含まれており、
その内容から戦前期の女学生の日常生活を垣間見ることができます。

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この資料は「ピアノのレッスン」と題された400字詰め原稿用紙2枚半(1000字)
の作文で、百合子さんが3年生のときに提出したものです。

火曜日の放課後、お道具もかたずけないでピアノのレツスンにかけつける私だ。
今日も又、大急ぎでお部屋の前に来てこつこつとノツクしながら中をのぞくと、
ミス・スエットナムが目で「お入りなさい」をしていらつしやるのでそつと中に入つた。
中では未だ四年のMさんとHさんがドエットをしていらつしやる。

(中略)
ひき終ると先生は、英語で色々な事をおつしやってからMさんに、
「この曲は好きですか」とお聞きになる。


この作文の記述から、百合子さんは放課後に、
外国人の女性からピアノのレッスンを英語でうけていたことがわかります。

戦前期、授業以外に「稽古事」をしていた女学生は7割近くいたといい、
その代表的なものは、茶道、華道、ピアノでした。
とくにピアノはモダンで西洋化された新中間層の家庭の象徴として
人気が高かったと指摘されています。
(稲垣恭子『女学校と女学生』中公新書)

ことに、外国人教師からピアノのレッスンを受けるというあたりは、
山手(横浜)の土地柄を感じます。

ちなみに百合子さんのお父さんは現役の陸軍少佐ですので、
家庭環境としては「モダン」な雰囲気はなさそうなのですが、
娘としては当時流行していた「モダン」なライフスタイルに
憧れるところがあったのかもしれません。

◆追記
このピアノのレッスン、私はプライベートな「稽古事」と思っていましたが、
あるいは、学校の「課外授業」かもしれません。
百合子さんの資料群のなかに含まれる「捜真女学校学則」には

「規定以外ノ時間ニ於テ特ニ音楽又ハタイプライターノ教授ヲ望ム者ハ
左ノ授業料ヲ納ムベシ」


として

「一、ピアノ授業料
      一週一回 毎月 金 四円(約8000円)
        ピアノ使用料 毎月 金 二円(約4000円)」

と規定があります。

ちなみに、捜真の授業料は
第1学期(4月1日~8月31日) 20円
第2学期(9月1日~12月31日) 20円 
第3学期(1月1日~3月31日) 15円
年間合計55円ですので、
ピアノのレッスンの方が年間だと高い(72円)
ということになります。

(吉)
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by tohatsu | 2012-07-20 17:28 | 調査余話 | Trackback | Comments(0)  

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